夏目漱石「吾輩は猫である」5ー8回その2 20200628、20200711読書会テープ

日露戦争

S 主人は泥棒の時は寝込んでいたが、猫と鼠の戦争の夜はさすがに起き出して来た。主人は、一回目に懲りて、二回目は飛び起きた。それによって泥棒の話と猫の戦争の話二つの話が繋がって、対になっていると分かる。

Y 何でいきなり鼠が反撃してくるのかと思ったのですが、対になっていると考えると分かる。

S 普通は猫の方が強いのだけれど。奥さんは本当にずうずうしい猫と言い、たたら君は猫鍋にするとか、それを聞いた猫が一念発起して、ついに鼠を捕ることを決意する。日露戦争の風刺として書かれている。そうすると、猫が日本だとすると、日本が日露戦争をはじめたのは、いろいろな人に馬鹿にされて焚き付けられたからということになるか。

Y それならやってやるわということになった。いろいろな人に馬鹿にされて、これまで虚仮にされたら猫様だってやるんだと。

K しかし思ったより難しかった。

S これが日露戦争の風刺だとすると、他の国に馬鹿にされたという史実はどうなっているだろう。

K 日清戦争(1894-5)に勝ったのに、三国干渉によって遼東半島を取りあげられる。政府は臥薪嘗胆を合い言葉にして日露戦争(1904-5)の準備をはじめる。

S 日比谷焼き討ち事件が1905年9月で、国民が講和に反対しているというのが非常に奇妙。

K マスコミのせいで、今もそうだけれど、戦勝が実際よりもよく伝えられていたから。

S 「猫」は1905年1月から「ホトトギス」に発表され、5回は7月1日号に、6回は9月末に脱稿したという(漱石研究年表)

S 日清・日露戦争は、日本が国際社会にデビューして正当に扱われることを目的にして戦った、それに対して1931年からはじまるアジア太平洋戦争は侵略戦争で、風刺はより難しくなるのではないかな。侵略にはかわりないけれど。( 加藤陽子の[「満州事変から日中戦争へ」によると、中国が条約により日本に認められた権利を尊重しないので正当防衛として満州事変を起こしたと、当時の日本政府や商工業者は考えていたという。)

 猫の日露戦争は、多々良君や奥さんにやいのやいの言われて一念発起して鼠をとることになったと書かれている。それなりの理由が立つから風刺の対象になるのでは。

K 煮て食われるよりはやるぞ。やられるならやるぞという。

Y 軍歌を作っている人が、俺たちがやらなかったら俺たちが中国になるのだなあということを言っていた。古関祐而さんという人です。それに比べると、満州事変の方は今のことばで言えば炎上必至。

【泥棒=西洋人】

S 猫の戦争は、バルチック艦隊と東郷大将、旅順などはっきり日露戦争を指名している。それでは、前半の泥棒事件はどうなるだろう。

Y 猫が日本だとすると、泥棒がはいってきて、怖くて声も出せずに何もできずに隠れている、何か非常に生々しい感じがする。

S 泥棒とは誰、何だろう? これも風刺だとすると何だろう? 寒月君に似ている、じゃあ、泥棒を西洋人としたらどうだろう。

Y 眉がしっかりしている。真一文字のいい男。

Y 土足で踏み込んできて、取るのが食べ物とか、着物。品物がそれであるのは意味があって何か理由がなくてはならないのだけれど。

S 絹でしょう、西洋人が欲しがったのは絹、それからアジアの茶碗。

K 山芋が入っているのは木箱。木箱の中身は見えない。

S 抹茶茶碗は木箱に入っている。

Y  山芋は、肥前唐津の多々良君のお土産。

S 唐津の陶磁器。

Y ちりめん、紬。茶碗。泥棒は文化を根こそぎ持って行ったということ。

S その西洋人が寒月君に似ている。寒月君は西洋風の教育を受けている。

K 理系です。

S 寒月君は中身を西洋人に入れ換えた日本人。科学の分野は西洋絶対だから、寒月君にそっくりの泥棒ということになる。

K 家人はみんな眠りこけていた。眠れる獅子、実際に戦争をしてみたら猫だったというのは中国清朝。日本も同じで、猫が虎になった夢を見るのは第8回にある。

S  そうすると「吾輩は猫である、名前はまだない。」というのは、吾輩は国際社会でまだ名前を知られていない日本(未満)であるということになる。風刺がきつい。