清風読書会

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『月の客』その3

【犬について】 Y 犬がたくさん出てくるのですが、何でそんなに出てくる? 作品の中で個別に意識されていない犬が何匹も入れ替わって出てきて、何匹目かは忘れたけれど犬は主人公とずっと一緒にいて、守って、脇に寄り添っている。 S 何匹も入れ替わるという…

『月の客』 その2

【ラザロ】 S それから、もちろん生と死が融合している。 K イエスが呼ぶとラザロが復活した。ラザロがいるところにはイエスがいるということらしい。 S ラザロ=イエスではないの? ラザロの居るところイエスがいる。そしてイエスは復活したからイエスなんで…

『月の客』 山下澄人 2019年9月初出、2020年6月10日刊 20201114読書会テープ

【はじめに】 1996年に初演された野田秀樹の『赤鬼』2020年版が公開されているので、最初の方だけ見ていたのだけれど、20年ぐらい前の『半神』と比較して案外だった。『半神』は萩尾望都の漫画が原作で、1886年に初演されているから、初演で言うと10年の差が…

川端康成 「散りぬるを」 20200927読書会テープ

【はじめに】 「片腕」を三島由紀夫が絶賛しているので、新潮文庫の『眠れる美女』を購入したが、その中で「散りぬるを」(1933)がもっとも面白かったのでこれを取りあげることにした。代表作の「雪国」(1948)よりかなり早い戦前の同人誌時代の作品。ノー…

フローベール 「ヘロディアス」 20200913読書会テープ

【はじめに】 使用した本文は、『三つの物語』、谷口亜沙子翻訳・解説の光文社古典新訳文庫。 【サロメ】 S さて、どこがなぜ分かりにくかった? K キリスト教誕生の頃のユダヤ史やローマの支配について知識がないから、分かりにくい。こちらから見るとどの…

予定

8月8日 降誕祭のパアティ 森茉莉 8月23日 エミリーへの薔薇 フォークナー 9月13日 ヘロディアス フロベール 9月27日 散りぬるを 川端康成 10月4日 掌の小説 川端康成 はじめの6編 10月18日 月の客 山下澄人 人生は驚きに充ちている 中原昌也

森茉莉「降誕祭パアティー」「文壇紳士たちと魔利」  読書会テープ20200725. 20200808

【はじめに】 両作品は、2001年に刊行された電子ブック『贅沢貧乏』(新潮社)に収録されている。『贅沢貧乏』は、1963年5月に新潮社から単行本として刊行され、1978年4月に増補されて新潮文庫に収められた。初出は、「降誕祭のパアティー」が1964年5月、「…

夏目漱石「吾輩は猫である」5ー8回その3 20200628、20200711読書会テープ

【鎖状の連鎖小説】 S 猫は他の漱石作品と比べて非常に読みにくいと感じる。むしろ耳で聴いたほうがよいのではないかと思う。ちょうど落語を聴いているようにすれば、話題がどんどん滑って行くのに乗れる。 落語だとどんなに難しい話題でも耳で聴いて分かる…

夏目漱石「吾輩は猫である」5ー8回その2 20200628、20200711読書会テープ

【日露戦争】 S 主人は泥棒の時は寝込んでいたが、猫と鼠の戦争の夜はさすがに起き出して来た。主人は、一回目に懲りて、二回目は飛び起きた。それによって泥棒の話と猫の戦争の話二つの話が繋がって、対になっていると分かる。 Y 何でいきなり鼠が反撃して…

夏目漱石 「吾輩は猫である」5ー8回その1 20200628、20200711読書会テープ

【はじめに】 5章は、前半は、泥棒が入ってその姿形が寒月にそっくりだったこと。後半は、猫の日露戦争、ネズミを取ろうとして、ついに取れなかったこと。 6章は、猫の皮を剥ぐとか、女の髪の話。 7章は、猫の運動と海水浴。銭湯と裸体の話。 6、7章は身体の…

中原昌也 「血牡蠣事件覚書」(2001)「凶暴な放浪者」(2004) 20200621読書会テープ

中原昌也「待望の短篇は忘却の彼方に」2003年春刊その3 20200523読書会テープ

【頓挫する物語】 S ところで、この部屋には何でトイレがないの? Y 人が住んでいないんでしょう。 K トイレもなく湯沸かしもないし、それでいてクッキーを焼く。ピクルスは買ってきたのだろうけど。 S 「『女子大生仲良し三人組、ライフルで射殺さる』とい…

中原昌也「待望の短篇は忘却の彼方に」2003年春刊その2 20200523読書会テープ

【新聞紙】 H 剥製も、そこにないはずの身体が加工されて、現在に存在するわけですね。 S 中身をくりぬいて、過去・現在・未来という時間の流れから疎外されてしまう、ずっと滅びないで元の姿のままでいる。剥製とは時間を止めること。 Y 新聞紙もある意味で…

中原昌也「待望の短篇は忘却の彼方に」2003年春刊 20200523読書会テープ

【はじめに】 H ひさびさに中原を読んでいる。 S こんなに分からなかったけ、歯が立たない。 Y 分からないのが面白いのだけれど、噛み応えもなければ噛んでいるの?みたいな不思議な感覚でした。 S 私がいちばん分からなかったのは、老婆が二回り大きいとい…

太宰治「ヴィヨンの妻」その3

【ウントク・ヒョウトク】 S 「ケケケと妙に笑いました」というこの子どもを小説に書くのは、今だったらリスキーでしないでしょう。どうしてこの坊やは「阿呆」になっているのだろう? Kこれは実体験ですよね。津島佑子が書いている。 S 実体験だからといっ…

太宰治「ヴィヨンの妻」その2

【ネットワークとしての家】 H 妻が家を出たというのが大きいのではないか。家同士がつながる、飲み屋さんの家と大谷の家がいつの間にかくっついてしまう。僕は「清貧譚」が好きだから、家を出て、家に入ることに注目している。 S 家を出るという時の家は、…

太宰治「ヴィヨンの妻」 20200425読書会テープ

【はじめに】 登場人物は、大谷という作家、その妻、こどもが一人。一方、上州から出て来て小料理屋を開いている夫婦。戦前から戦後にかけて大谷に魅入られたように酒を飲み干されてしまう。今回事件が起きて、年末の押し詰まって、ようやく5000円を集めてき…

太宰治「作家の手帖」その5

【美しくのんきな女たち】 S さらに問題は残る。のんきで美しいを価値として私たちは認められるのかどうか? K 責任がないからのんきで美しいんでしょう。 S 戦争のまっただ中なのに、無心に、つまり戦争のことなど一切考えないでいられることに、無責任…

予定

5月23日15:00 中原昌也「待望の短編集は忘却の彼方に」から冒頭の短編、「虐殺ソングブックremix」から、町田康のリミックス作品

太宰治「作家の手帖」その4

【アメリカの母さんと日本の母さん】 S 最後の段落でアメリカの女と日本の女というのが表に出ているところがひっかかる。これをどう考えたらよいか? K この最後の段落3行か4行、これは書かされたのか、ご時世か? だから騙されているという感じがする。 S …

太宰治「作家の手帖」その3

【母さんの洗濯】 H 井戸端の母さんということばも同じですね。こどもがいる自分自身とも言えるし、もっと無名の存在のお母さんという意味ももってしまう。世代的にどちらに向かっても使える。自分でもあるし、無名でもあるし、両義的な使われ方。 K 奥さん…

太宰治「作家の手帖」その2

【階級を超える】 Y 煙草の火を貸すとかもらうとかいうのが、太宰の世界の大きさを表現している。コミュニティーとか、他者のとらえかた。 K いつも自分は多数派になれない。 Y ここで長々と書かれた関係性の話は何を意味しているのだろう? S 全体を見ておく…

太宰治 「作家の手帖」 1943年10月 20200503読書会テープ

【はじめに】S 小説が発表されたのは1943年10月。作中に書かれた出来事としては、昭和12年(1937)7月7日の盧溝橋事件。発表時と作中の出来事の時間に少しずれがあるようだ。時間を整理する必要がある。 時間の感覚が少し分かりにくい。「ことしの七夕は、例年…

花に舞う 深沢七郎 読書会テープ2

【花札】 Y 花札のルールが詳しい。うちのルール、ここでしか通用しないルールを使っているのはなぜか? S 辰夫には内省的なところがあって、兄貴ほど乗せられやすくない。観察者、書き手、語り手としての観察眼があり、お金の勘定もできる。辰夫には、博打…

花に舞う 深沢七郎 1981年 20200329 読書会テープ1

【はじめに】 登場人物は兄貴と呼ばれるシマちゃん、その妹かずみちゃん。かずみちゃんにちょっと惚れている辰夫。この辰夫の視点で語られる。甲府に近い小さな町の話。 鉄ちゃんは出世して東京交響楽団でフルートを吹いている。それを知ったシマちゃんは4月…

次回4月25日予定

スカイプ読書会は毎月第2、第4土曜日15:00から開催。参加希望者は連絡下さい。 1月25日15:00 深沢七郎 「数の年令」 2月8日15:00 谷崎潤一郎 「金色の死」(講談社文庫 青空文庫) 2月29日(変則)土曜15:00 泉鏡花 化鳥(青空文庫) 3月22日日曜15:00 泉鏡花 三尺…

深沢七郎 「妖木犬山椒」その3 20200111読書会テープ

H 正隆が四宮の即位を告げるところ、ありがたやと正隆には聞こえた、それから、正清の死を告げたところで、三宮の涙と正隆の涙が違っている(p.337)というのは、どういう意味だろう? S 「ふふふふ」(p.337)のところ、笑っているようにしか聞こえないのだけれ…

深沢七郎 「妖木犬山椒」その2 20200111読書会テープ

【犬山椒】 K 毒の山椒の話で、毒の山椒が実は催眠効果しかなかったというのはどういうこと? S 犬山椒は男山椒で、実がならない。普通の山椒は、雌木に実がなる。ところが、ここにイヌ山椒とかイネ山椒というのが出てくる。これには毒があるとも、催眠効果…

深沢七郎 「妖木犬山椒」その1 20200111読書会テープ

【歴史と神話】 S 小説は、歴史と伝説の間にあって何ができるかという問題がまず出ている。歴史の書物に一行しか書いていないことでも、語り伝えられた口碑は膨大になる。文字は縮約されている。両者には、語り方の違いがある。歴史上の人物には、道鏡とか孝…

深沢七郎「妖術的過去」1963年 20191207 読書会テープ

【はじめに】 ぼーっと見ている60歳の金次の枠と、すーっと変わって行く回想の物語本文の対比がある。ぼーっとと、すーっとの対比。