清風読書会

© 引用はアドレスと清風読書会を明記して下さい。

「ねじの回転」その3 ヘンリー・ジェイムズ(土屋 政雄 翻訳) 読書会テープ20230305

【反復・螺旋・巻き込み】 M 家庭教師がフローラを手に入れるか、マイルズを手に入れるかというときに、それぞれジェスル先生やクリントが現れている前で、それが問題になっているのが気になりました。 S この女教師はジェスル先生のしたことを反復している…

「ねじの回転」その2 ヘンリー・ジェイムズ(土屋 政雄 翻訳) 読書会テープ20230305

【文字と音】 S グロースさんが文字を読めないことが重要ではないか。文字を読めない音声だけで生きている人と、文字を操る人との対立ではないか。フローラとグロースさんは音声の世界に生きているが、マイルズは学習したい勉強したいという成長の路線に乗っ…

「ねじの回転」その1 ヘンリー・ジェイムズ(土屋 政雄 翻訳) 読書会テープ20230305

【はじめに】 S 最初に時間の枠を確認しておきます。 ダグラスが、筆者の「私」たちを前にして、おそろしい話を朗読して聞かせた時点。その時ダグラスは大体60歳から65歳位と見積もった。ダグラスは子供が二人登場する恐ろしい話を知っていると言い、その話…

次回 3月26日日曜13:00 ♡中原昌也快癒祈願読書会♡

中原昌也 パートタイムデスライフの冒頭3話。♡快癒祈願読書会♡

ヘンリー・ジェイムズ 行方昭夫訳「嘘つき」その2 20230218読書会テープ

【秘密】 S 画家が肖像を描くということと、小説家が小説を書くということが相似形になっていて、小説についての小説になっている。その構造をもう少し明らかにしたい。 真ん中に何を置くかという最初の話に戻ると、大佐という特異な人物を置いていると考え…

ヘンリー・ジェイムズ 行方昭夫訳「嘘つき」その1 20230218読書会テープ

【信頼できない語り手】 H 嘘を暴くために絵を描くときに、ライアンは、絵筆を使って現実そのものを描くというより、ねじ曲げて大佐を描いている。その結果はじめて歪んだ大佐の嘘が描かれる。その絵筆をとるやり方は、大佐が現実に対して脚色してその結果嘘…

ヘンリー・ジェイムズ 行方昭夫訳「ほんもの」 20230218読書会テープ

【はじめに】 「ほんもの」も挿絵画家の話です。画家のもとに立派な紳士と細っそりした夫人が訪ねて来て、絵のモデルにお願いしたいと言ってくる、しかし全然まるで使えない。そこへ何にでもなれるミス・チャームや浮浪者のようなイタリア青年オロンテが来て…

ヘンリー・ジェイムズ 「教え子」その3 20230205読書会テープ

【国際テーマと詐欺】 I コスモポリタン的生活というのは、最近のインスタグラムとかユーチューブで、海外へ行って私たちこんなセレブリティなことしていますとか、仕事が日本では一攫千金もできないから、海外で新しいことをする、小説を読みながら近しいも…

ヘンリー・ジェイムズ 「教え子」その2 20230205読書会テープ

【資本主義前夜】 M これ読んでいて資本主義の話に思える。私の今の仕事はリース取引で、会社が物を買ってその代金と利息をお客さんからもらいながら、その物を貸す、金融商品なのですが、これをしていると騙ましている感がすごくある。この小説は、資本主義…

ヘンリー・ジェイムズ 「教え子」その1 20230205読書会テープ

【はじめに】 H はじめてヘンリージェイムズを読んだんですが、とても不思議な文章、ぼんやりしたところに焦点を当てようとしている。 たとえばペンバートンとモーガンの対話で、モーガンが嘘つきと言ったのに、両親は「これでもペンバートンさん、私たちを…

予定

オンライン読書会は月2のペースで、土曜か日曜に開催しています。 3月5日日曜13:00から ヘンリージェイムズ 光文社新訳 「ねじの回転」 日にち希望についてご連絡下さい。

今村夏子 とんこつQ&Aその3 読書会テープ20221016

【全面的マニュアル化】 S 私たちの生活全般が全面的にマニュアル化したということがある。仕事も教育もハンバーガー店もマニュアルの方が地道に素でするより効率がよいということになった。その事態と、この小説がよく符合する。自律より洗脳型の方がうまく…

今村夏子 とんこつQ&Aその2 読書会テープ20221016

【大阪弁ネイティブ】 S 大阪弁のところ、Iさんネイティブで発音してみて下さい。 I あめちゃん食べる、ああおもろ、ほなさいなら。ちゃうちゃう、おかみさんとちゃう。 S 「あなたじゃないねんだから」というのも、もう絶対ネイティブじゃないと発音できな…

今村夏子 とんこつQ&A その1 読書会テープ20221016

【はじめに】 S しみじみ面白いですね。ところで最初に出てきたドルフィンってどういう店? 本文の中にあまり情報がない。 I 夜の時間帯の店、キャバクラのような? K 夜のレストラン? H 8時から午前2時までとある、夜の店。 S 主人公の今川さんの年齢はど…

太宰治 『道化の華』その3 20221001読書会テープ

S 真野の怪談が一番面白かった。入水した青年の話で、カニが翌朝部屋に出たという。これ入水者がどうしてこんなにいるんだ? ダブルになっている? 自殺をはかった青年と自殺をはかった大庭葉蔵の話が重なるが、何で重なるのか? 葉蔵は自分の身と引き合わせ…

太宰治 『道化の華』その2 20221001読書会テープ

【パノラマ式描写】 S 少女から見た葉蔵の横顔で、ここで視点が変わったりする。最初に読んだときボヴァリー夫人を読んでいるのは葉蔵だとばかり思っていた。勝手に視点が変わる。 K 看護婦が横腹をつつくというのも葉蔵のことだとばかり思っていた。どうせ…

太宰治 『道化の華』20221001読書会テープ

【語り手の実験】 S『道化の華』は何だかとても難しかった。 K 新しい実験的な作品だったんでしょうか。語り手が作者自身で、それを僕と言っている。 S その語り手のどこが新しいのだろう? まず大庭葉蔵という『人間失格』にも名前が出てくるフイクション上…

次回4月17日曜13:30より

泉鏡花 夜行巡査 青空文庫収録

泉鏡花「さゝ蟹」20220306読書会テープ

S 「さゝ蟹」は、全集別巻の書誌によると、明治30年5月に「国民の友」に3回にわたって連載された。1897年だと漱石より少し前の作品。これまで読んだ中で一番この小説に近いのは、漱石の「一夜」という作品じゃないかと思う。 絵に描いてある女の人とか、葛餅…

記録

6月5日泉鏡花 春昼 春昼後刻 6月26日泉鏡花 貝の穴に河童の住むこと 7月18日 宇佐美りん かか 7月30日 中島敦 光と風と夢 8月14日 中島敦 文字禍 山月記 9月18日 夏目漱石 明暗

宇佐美りん「推し、燃ゆ」 その2 20210508読書会テープ

S 私がこの小説から思い出したのは、ハーモニー・コリンの『ミスター・ロンリー』。 日々マイケル・ジャクソンになろうとしている青年がマリリン・モンローのそっくりさんと出会って、島のパーティーへ誘われる。そこはチャップリンやジェームス・ディーンの…

宇佐美りん「推し、燃ゆ」 その1 20210508読書会テープ

【はじめに】 「推し、燃ゆ」は、2020年秋季号の文藝に発表され、同年9月に河出書房新社から出版、芥川賞受賞。 章立てはなく、アスタリスクと行開けによって小区切りがある。内容を要約しておく。 1、推しの炎上 2、アルバイト先にて 3、祖母の死 4、まざま…

富岡多恵子 「笑い男」 20210424読書会テープ

【はじめに】 S 「笑い男」は

富岡多恵子 「立切れ」 20210424読書会テープ

【はじめに】 「立切れ」は、1977年の第4回川端康成文学賞を受賞した作品。同年刊行の自選短篇集『当世凡人伝』に収録された。 落語の「立切れ」を下敷きにしているので、その内容を略述しておく。芸者の小糸と恋仲になって商売を顧みない商家の若旦那が、親…

今村夏子「的になった七未」 2020年1月「文学界」 20210327読書会テープ

【はじめに】 S いくつか気になる点を挙げておく。 第一話と対になっている。違うバージョンの同じ話だとすると、違いはどこにあるか? 名前が少し気になる。七未がななちゃんという愛称になるということ。七未の七を取って、七男という名を子供に付けるが、…

予定

5月23日日曜15:00 綿谷りさ 意識のリボンから 第一話と表題作 5月22日土曜14:30 プラグマティズム6講 参加希望者はアドレスをお送りください。当日Skypeに招待します。

「近未来の神話」 J.G.バラード 村上博基訳 1982年 20201213読書会テープ

【はじめに】 『人生は驚きに充ちている』のなかに収められている、2013年3月に発表された「廃墟が語りかけてくる」の中で言及されていたバラードを読んでみることにした。 バラードは、映画化されている「太陽の帝国」とか、「ハローアメリカ」、「ハイライ…

「人生は驚きに充ちている」その2 

H 38ページの違和感が説明できるようになりました。「この店で私は次に来ることがあったとしても、チャーハンだけは二度と注文しないだろう」とある。 今来ているのは2回目の来店ですよね、それなのに「次に来るときには、チャーハンだけは注文しない」とい…

「人生は驚きに充ちている」 中原昌也 2020年7月刊 20201121読書会テープ

【はじめに】 初出は2019年5月『新潮』。2020年7月に刊行された単行本『人生は驚きに充ちている』の巻頭のNovel。 物語は、作家らしき一人称の私が編集者小松へ原稿を渡すまで。テーマは心霊現象のような不思議な出来事で、日記にあらかた記しておいたのに、…

『月の客』その3

【犬について】 Y 犬がたくさん出てくるのですが、何でそんなに出てくる? 作品の中で個別に意識されていない犬が何匹も入れ替わって出てきて、何匹目かは忘れたけれど犬は主人公とずっと一緒にいて、守って、脇に寄り添っている。 S 何匹も入れ替わるという…